竹中英太郎記念館訪問記

(平成16年4月17日)

春も本格的に暖かさを増してきたこの頃、今日も快晴で気温も24度を越えるとか。絶好のドライブ日和ということで、山梨県は甲府盆地まで出かけることにしました。
実は、先日の10日に、あの竹中英太郎さんの美術館がオープンしたという情報を掴んでいたのです。これは出かけなくてはいけない、という思いを腹に収めていたのですが、なかなか出かけるタイミングがつかめなかったのです。早く行かなくては、兎に角オープンの月に行かなくては、と思い続けて今日を迎えたのでした。
さて、本日、家内はドライブという事以外は知りません。春のいい日に家にいてももったいないという囁きに、重い腰を上げたという次第。小旅行決行です。

竹中英太郎の名前は、乱歩さんの本の挿絵を描いた人という事ぐらいしか知りませんでした。乱歩さんのストーリーに効果を与えていた独特の挿絵の存在があります。その妖しさに満ちた迫力のある挿絵は、さすがに素晴らしく、あの、PoeにおけるHarryClarkeの関係に比べても遜色が無いクオリティだと思います。その作家こそが、竹中英太郎という人物でした。竹中英太郎、一般的にはどれほどの著名人なんだろう。画集などを捜しても、まずは見つからない。しかし、その挿絵の迫力は、大変な魅力を持っています。その独特の雰囲気のある作品は、当時の雑誌や新聞を見つける以外に見ることは出来ないんだろうか。いや、なんとしても手元で何度も見てみたい。画集が欲しいぞと考えるのは僕だけではないでしょう。
という事で、竹中さんの絵が載っている本の情報を得るべく、手当たり次第に検索していたところ、「湯村温泉」というホームページにどういうわけか行き当たり、そこで、近々竹中英太郎の美術館が設立されるという記事を見つけたのです。これが、上記の掴んだ情報でした。
ユムラオンセン?知らないなぁ・・・なんでそんなところに、竹中英太郎の記念館が建っちまうんだ???
いったい何処だ?というのが初印象です。
早速アクセス。以下のアドレスが、その訪ね先でした。

http://www.diana.dti.ne.jp/~yumura/spot/takenaka-eitarou.htm

曰く、湯村温泉に竹中英太郎記念館が出来ます。」
竹中英太郎の画業集成 甲府・湯村に美術館
第二の故郷≠ノ来月開設、館長は二女・紫さん

 本物だ! このアクセスは、4月2日のことでした。

さてドライブ当日。午前9時15分に、家を出て、中央高速をひたすら甲府昭和に向けて車を走らせます。となりでノー天気な家内は、甲府って何があるの?美味しいものがあるかしら。うーん、ホウトウは分かってるけど、今日は暑いし・・てな事をぶつぶつ言っていますが、こっちはお構い無しです。ひたすら前進あるのみ。「ひょっとして乱歩の挿絵原画がずらっと並んじゃったりしてんのかな・・いや、横溝もあるしな・・探偵趣味の表紙なんかバッチリだったら、もうたまんねえ・・・」視線の先は、古書店で拝んだ数々の英太郎さんのイメージが展開しています。・・・とってもアブナイドライブですが、社内の空気は楽しさに満ちておりました。互いの頭に浮かぶ絵は、全く違うようですが・・・・
談合坂で、ちょっと息抜き。落ち着くことが肝要です。・・・隣人にもエサを与えて、ご機嫌を取ります。・・この辺は、社会人30年のベテランです。ネゴシエートのポイントははずしません。

順調に走行距離も伸ばして、甲府盆地到着。中央高速を甲府昭和で下り、甲府駅を目指します。略地図では、甲府駅の北の方に位置する温泉地域のようです。・・・・・・若干の行き違いはありましたが、概ね問題なく、現地に到着。そこは山の中腹にある、個人住宅地の奥でした。閑静な木立の中に、瀟洒な邸宅が並んで建っています。奥が、館長の「金子 紫」さんのご自宅。その前に、目的の記念館がありました。

竹中英太郎記念館エントランス>


本日は、館長の金子紫さんが、直接の応対をいただきました。
この記念館は、竹中英太郎さんが、晩年過ごされていた家を改修されて作られたそうです。館長の紫(ゆかり)さんは、英太郎氏の次女で、この記念館を立てる意思をもたれたのは、長男の労氏の遺言に従ったのだということです。労氏とは、あの竹中労氏です。

金子 紫オーナー・館長

大変丁寧なお話をいただきまして、感激と感謝の一念でございます。

館内も、館長のお計らいをいただき、スナップ撮影させていただきました。

こちらは、入口から入ってすぐの1Fの展示室です。
暖かな証明は白色球のスポットライト。展示されているのは、カラーの本画です。労氏の著書「琉歌幻視行」などの表紙となった原画や、レコードジャケットの原画が色鮮やかに壁を飾ります。
見えている壁の展示は、「マレーネデートリッヒのポスター」(S49)、「マレーネデートリッヒ」(S49)などの原画です。
手前の棚に陳列されているのは、お土産のワインです。お洒落な椅子が、結構ですね。
この奥と、手前に、2Fに進める階段があります。

入口脇の階段から2Fの展示スペースを望む。
突き当たり正面には、戒厳令の夜の一連のシリーズ。真中の大作が「哀しみのマリア」です。その左、画面手前が「幻の少女像」。「熟れた果実」は反対壁面に飾られていました。

この2F展示スペースの奥が、問題の(!)モノクロームの世界です。紫館長は、その中でも横溝作品に寄稿した挿絵のシリーズがお気に入りだとおっしゃっています。

恐縮ながら、館長と
ご一緒にワンショット。
背景の展示が「鬼火」シリーズの原画です。
スゴイ。

この他、乱歩さん作品の挿絵原画もふんだん。
しばし、トランス状態となりました。

入口ドアも、住居時代のオリジナルだそうです。重い木製です。

そのワキには、こういったイカニモの像が・・・

左の写真は、エントランスの脇に設置されている石で描いた文字です。
「清風明月不用一銭買」と刻印されています。画面の上から「清風明月と不の一部」となりますが、お分かりでしょうか。
この句は、安重根(1879〜1910)の書いた漢詩の一部だそうで、英太郎氏自ら石を彫りこんだそうです。
1970年の作だそうです。
安重根は、伊藤博文射殺犯だそうです。

このあたりの意識が、英太郎氏の骨太なところで、挿絵画家として一世を風靡していた時に筆をいきなり折って、大陸に渡り、新境地を自らに問う行動を取ったことにつながるところなのでしょう。

紫館長の、愉しいお話を伺いながら、英太郎氏の貴重な原画を拝見でき、大変有意義な一日となりました。(少なくとも自分はですが・・・・この後、冷やしホウトウなどでご機嫌を伺いました。)
プライベートスペースを公開される為に、費用もおかけになられたということでしたが、非常に居心地のいいスペースになっていました。また伺いたくなりつつ、辞去いたしました。

お問合せ先などは、以下のとおりです。皆様も、お出かけになられては如何でしょうか?

竹中英太郎記念館・ご利用案内
開館時間:午前10時〜午後4時。 休館日:火曜日・水曜日。 
入館料:大人300円(高校生以上)・小人200円(小・中学生)
交通:JR甲府駅南口・山梨交通バス約15分。
住所:〒400-0073 山梨県甲府市湯村3-9-1 電話・FAX:055-252-5560 
メール:yukari_yumura@ybb.ne.jp